キャンプ道具の中でも、地味ながらマニアックで奥の深いのがアルコールストーブ。アルストである必要性が無くても使いたくなるアイテムです。
今回は、長年使ってきたトランギアの定番 TR-B25 とエバニューのチタンアルスト EBY254 を比較してみます。
■アルコールストーブについて
アルストの構造は、内部に壁があり、内筒と外筒に分かれてます。内部ではアルコールが両筒に流れ込み、アルコールが気化する仕組みになってます。
まず内筒部の気化したアルコールに引火し、内壁から暖めます。暖まった内壁は外筒部のアルコールの気化を促します。外筒には沢山の小さな穴があり、そこから吹き出す気化したアルコールに引火し、気流が生まれバーナーのように燃焼します。
■トランギア TR-B25
サイズ:外径75×高さ45mm
容量:70ml 25分燃焼
質量:110g
世界中で最もスタンダードなアルストでしょう。製品は ①本体(タンク) ②火力調整キャップ ③ネジ蓋キャップ から構成されてます。トップの空気口をスライド蓋で大きさを変え、火力を調整できます。このような仕組みからゴトクが必要です。
トランギアの特徴・コンセプトは、火を止めても残ったアルコールを蓋を閉めることにより蒸発を防ぎ、後で再び使うことが可能な事です。これに対してエバニューは、火力が決まってるので、アルコールは計算された量を入れて使い切ってしまう考えです。
火力調整キャップは、装着時も外筒部の噴出孔は塞がれないよう隙間が確保されてます。調理の途中で火力調整したり、消火時に使えて大変便利ですが、火力調整する際に、蓋を持って炎に手を近づけるので、火で熱い蓋を素手では触れないのが難点。火傷しないように手袋だったり、手際よく使いこなすには慣れが必要です。
火傷しないにしても、熱くて触れなかったり経験すると、こんなツール(マグネットネジ拾い)が欲しくなります。
シャフトを回して先端のマグネットを外します。これがあれば、ゴトクがあってもヤケドなど心配なく、思うように操作がスムースに進みます。
最大火力の全開モードでは、火力調整キャップを取り除き、消火時にキャップを全閉した状況で被せます。
アルコールですが、どのアルストも規定容量以上アルコールを入れるのは大変危険ですし、トランギアの場合も内壁が暖まらずアルコールの気化が悪くなり火力が上がりません。規定アルコール容量は覚えておきましょう。
■エバニュー チタンアルコールストーブ EBY254
サイズ:外径71.5×高さ42mm
容量:70ml
質量:34g
素材:チタン 芯 グラスウール
チタンの軽量アルストで、青みを帯びるのが魅力的。一見トランギアと材質やデザインの違いだけかと思いがちだが、機能や使い方は大きく異なります。30mlのアルコールで約5分間燃焼し、およそ400mlのお湯を沸かす事が出来るようです。
まず、チタンで34gと軽量で丈夫。山登りなど軽量優先には良さそう。よくお湯沸かし専用の軽量アルストとか書かれてますが、使い方次第で色々できそうです。
エバニューは使い方が二通りあり、最大火力の全開モードではゴトクが必要となります。専用のチタン製で厚さ0.3mmと強度を失わないギリギリの極薄仕様で重量なんと3.5g。従来のゴトクよりも12.5g軽量化。
因みに、以前のステンレス製のゴトクはトランギアには使えませんでしたが、念の為合わせてみました。
あれ?入りますねえ。火力調整キャップは難しそうですが、バーンナウトで使うならトランギアにも使えそうです。
そしてエバニューの場合、もう一つの使い方は、中火モードです。アルストに直接クッカーなどを乗せる使い方です。燃費もよさそうで、温める調理には便利です。
ところで、トランギアはエバニューのような中火モードの使い方はできるのでしょうか? 色々調べても情報がありません。イワタニさんの公式HPでも推奨されてません。
そして最後は消火です。トランギアはキャップを乗せればすぐ消えますが、エバニューは基本的に消火方法はありません。よく聞くのが、Gaobabuの火力調整蓋を使う方法です。一度で消えない場合もあり、その時は少し持ち上げて置き直すと消えるようです。火力調整機能も使えるらしいですが、それならトランギアかガオバブのアルストを使えばいいのであって、エバニューのチタンアルストを使う意味がないのでは?
もう少しアルストを理解するために、アルストの構造を見てみます。
トランギアの内筒口のクローズアップです(ちょっと汚いですね)。センター内筒口の脇に小さな孔がありますが、これらが外筒から気化したアルコールの噴出孔になります。
エバニューのクローズアップですが、センター内筒口の横に、外筒の上下の孔があります。また内筒口にアルコール量がわかるように、30mlと60mlの目盛りがあります。下に外筒孔があるのでアルコールを入れ過ぎると溢れそうです。
■今回の結論
改めて代表的なアルストの違いが理解できました。本当にアルストだけに火力を委ねるケースは、山登り、ハイキングやULキャンプなど軽量化が必要なシーンでしょう。軽量化となるとエバニューのチタンが有利ですが、それ以外では焚火やガスバーナーなど代替の火力もある環境がほとんどで、アルストやゴトクの重量も気になりません。もし調理をするなら火加減調整ができるトランギアが便利。トランギア使うならゴトクも必要なので(実際には風防とかも必要)、ストームクッカーとして使う気がします。ただアルストを使う目的が、コーヒーやカップ麺のお湯を沸かすのであれば、ゴトク要らずのエバニューに必要なアルコール入れて放置が手っ取り早いでしょう。更にシーンによってはエバニューのBluenote stove も。
結論。調理するならトランギア(ストームクッカー)。湯沸かしだけならエバニューチタン。
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